人は寝不足になると、不愉快な気分になったり、集中力に欠けたり、意欲低下が起きたりします。これは、身体ではなく脳そのものの働きが低下し、脳が休息を要求しているために起きると言われています。
人の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類が組み合わされ構成されています。この2種類の眠りが約90分で1つの単位を作り、いくつかの単位がまとまって一晩の睡眠を作ります。そのため、この1つの単位の終わり頃は目覚めやすくなり、90分の倍数で起きると目覚めが良いとされています。また、最初の3時間に質のよい睡眠がまとめて出現すると言われています。
人の睡眠の調節の1つにサーカディアンと呼ばれる生体リズムがあります。本来人の生物時計は1日25時間なので、地球の自転、1日24時間に合わせてリセットしています。この1日24時間に合わせる因子は、昼と夜の明暗の光、運動、学校、仕事、温度や湿度、周りの音などがあります。眠気はこのリズムにより時刻とともに変化しますが、朝光を浴びる、運動をするなど環境を整えることで、睡眠リズムをより調節しやすくなります。
他にはホメオスタシスと呼ばれる、体内の状態が一定に保たれることによる調節機能もあります。この働きによって脳は、先行する睡眠不足量を基に、その後の睡眠の質と量を決定します。つまり、昨日寝不足であった場合、今日の寝入り数時間に連続した深い睡眠が多くみられます。こうすることで、昨日の睡眠不足を補い、寝不足は解消されます。寝だめが出来ないのは、この機能が過去の情報に基づいて働くので、未来の事情を取り込んで眠りの先取りが出来ないためです。
その他にも、体内の神経伝達経路やホルモンなど、色々なものが睡眠を調節しています。
それでは、睡眠が障害される病気をいくつか見てみましょう。
【睡眠時無呼吸症候群】:眠っているときに息の止まる病気。タイプは、気道が閉塞してしまうもの、呼吸をしろという指令が出なくなるもの、その両方が順にみられるものの3つ。肥満、下あごが小さい、扁桃肥大、二酸化炭素濃度などが関連していると言われ、治療はマウスピースやCPAPと呼ばれる強制的に呼吸をさせるものを使用、ダイエットなど。
【ナルコレプシー】:何の前ぶれも無く突然眠り込んでしまうという睡眠発作のために居眠りを繰り返す病
気。10?30代に多く、治療は薬や生活指導(昼寝の推奨、夜更かし防止など)。
【むずむず脚症候群】:眠るために横になると脚がむずむずして、足を動かさずにはいられない病気。夕方から夜に起こることが多く、中年以降に多い。
他にも多くの睡眠障害がみられますが、共通しているのは質のよい睡眠確保が難しく脳の働きが低下し、それに伴う過眠や不眠、昼間の眠気、集中力の低下や頭痛など、様々な症状が現れます。また長期に及ぶ睡眠不足や睡眠の質の低下は、うつ病にかかることが分かってきました。不眠はうつ病の主な症状の1つで、どちらが原因でどちらが結果なのかは定かではありませんが、うつ病との併発率は大変高くなっています。睡眠不足や睡眠の質の低下は、身体の健康にも心の健康にも影響を及ぼしてしまいます。
一般的に睡眠時の呼吸機能は女性よりも男性の方が弱いため、睡眠障害は男性が多く、時に社会生活が困難になったり、大きな事故を起こしてしまうことがあります。
特に睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、糖尿病、脳卒中、心疾患などを合併します。重症の睡眠時無呼吸症候群になると、9年後には4割の方が亡くなったという報告もあります。心当たりのある方、激しいいびきのある方、十分眠っても眠気の強い方は、一度専門医に相談してみましょう。
以上を踏まえて、私たちが出来るよりよい睡眠を得るための条件を確認しましょう。
1)睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
睡眠時間は個人差が大きく、年齢、時代によっても平均睡眠時間は異なります。自分にあった睡眠
時間を確保しましょう。
年齢を重ねると、必要な睡眠時間は短く、眠りは浅くなるのが一般的です。
2)昼寝をするなら15時前の15-30分
午後、比較的に早い時間の30分程の昼寝は、体力を回復し、頭をスッキリさせます。長い昼寝時間
や、遅い時間の昼寝は夜間の睡眠に影響が出てしまいます。
3)就寝時間にこだわりすぎず、眠くなってから床に就く
眠れないのに床の中で悶々とすると、次第に床の中=悶々とつらい時間を過ごす場所、という印象
が出来、布団に入ること自体が不安の原因になることがあります。自分にあった時間に眠るように
することも大切です。また、眠りの浅いときは積極的に遅寝・早起きにしてみましょう。
4)光の利用でよい睡眠
朝強い光を浴びた体は活動をはじめ、14-16時間後に眠る準備を始めます。強い光を浴びることで
生体リズムを24時間リズムに近づけます。
5)刺激物を避け、眠る前は自分なりのリラックスを
就寝前のコーヒーなどのカフェインやタバコなどの刺激物、熱すぎるお風呂などは控えましょう。
ゆったりストレッチ、アロマで読書など、自分なりのリラックス法を見つけましょう。
6)毎日、同じ時間に起床。規則正しい3度の食事と、規則的な運動習慣
規則正しい起床と食生活は規則正しい睡眠習慣と生体リズムを作り、適度な運動は睡眠の質を向上
させます。
7)寝酒はかえって不眠の元
寝る前の一杯は、多少入眠しやすくする効果があると考えられています。しかし、様々な研究結果
から、睡眠が浅くなったり、いびきをかきやすくなったり、比較的早く目が覚めるなど、睡眠テストでも
睡眠への悪影響が報告されています。
8)睡眠中の激しいいびき、呼吸停止、足のびくつき、むずむず感は要注意
病気が隠れている可能性があります。医師に相談しましょう。
心身の疲れをとるためにより良い睡眠時間を手に入れられるよう自分に合った方法を試してみること
をお勧めいたします。
〈参考文献〉好きになる睡眠医学 内田 直
スリーピーのスイミン物語 立花 直子
http://jssr.jp/
http://kaminsho.com/
http://www.suimin.net/