健人『いゃ?、今日は遅くなっちゃったなぁ。月末締切前は仕方がないか』
ぐずぐず言いながら、帰路を急いでいると前から憧れのI先輩がやってくるではないか。
健人『お疲れ様です。初めまして 今年入社しました山田健人です!!』
I先輩『お疲れ様、あぁ?今年入った元気のいい彼っていうのは貴方のことね』
健人『嬉しいなぁ?。I先輩にそんな事いってもらって光栄の至りです。』
I先輩『別にかっこいいと言ったわけじゃないんだけど。思い込みの激しい新人君ね』
健人『いいんです。いいんです。だって、僕のお父さん、中年太りでぽっちゃりしてるんですよ。完全に今流行のメタボですね。お母さんも年々丸くなっている気がするし、両親そろってメタボ・・・。ぼくも将来はメタボの心配が。』
I先輩『山田君、メタボメタボって言ってるけど、メタボリックシンドロームって何なのか知ってるの?』
健人『先輩、いくらなんでも私は健診機関の人間ですよ。それぐらいの知識はありますよメタボは、太ってることでしょう?お腹が85cm以上だとダメなんですよね、それぐらい知ってますよ。最近テレビでもよくダイエット番組とかやってるし。僕も興味を持って見ているし。』
I先輩『うーん、確かにお腹が大きいことはひとつの目安なんだけど、でも、ただ単に「メタボ」イコール「太っている人」とか「お腹が大きい人」の別名ではないのよ。大事なのは身体の中身。身体の中でどんな変化が起こっているかが重要なの。』
健人『えぇ?、どういうことですか?』
I先輩『まず、メタボリックシンドロームかどうかを考えるときは、確かにまずお腹が大きくなってきているかどうかはチェックポイントになるわ。お腹が以前よりも大きくなってきているのなら、そのお腹の中がどんなもので構成されているかがポイント。(とはいっても、大人になれば骨や内臓のサイズはあまり変わらないので、成長期でもないのにそれでもお腹が大きくなるってことは、基本的にはお腹に脂肪がついてきている場合がほとんど。)ここで、体につく脂肪には、実は2種類の区別があるんだけど、それは知ってる?』
健人『脂肪に種類?カルビとかミノとかですか...』
I先輩『それは、焼肉の部位のことでしょう。そうではなくて、ひとつは、ぷにょぷにょと指でつまめる柔らかいお肉で皮下脂肪。もうひとつは、指でつまめないビール腹のようなタイプ。これは内臓脂肪といって、メタボに関わっているのはこの内蔵脂肪なの。』
健人『へー。それで、内臓脂肪がたまってお腹が大きくなったからってどうなるんですか?』
I先輩『内臓脂肪が大きくなってくると、ホルモン(のようなもの)の分泌を調節する機能がうまく働かなくなって、不都合な分泌が増えたり良いものが減ったりする異常が起こるということがわかってきてるのよ。その異常のせいで、ちょっとずつ血圧や血糖値や中性脂肪などが高くなってきて、健診の結果でも、「少し血圧が高め」とか、「境界型の糖尿病」「コレステロールが異常だから食事に気をつけて」とか言われるようになってくるわけ。こんなふうに、内臓脂肪に加えてこれらの異常が重なってきている状態をメタボリックシンドロームと言っているのよ。』
健人『なるほど。でもそういえば「ちょっと値が高めなので生活習慣に注意ってことは、ちょっとしか悪くないのでまだ大丈夫ってことだ」とうちの父親が自分で言ってたような...。』
I先輩『そこがメタボの落とし穴。
ちょっとだけ太めで血圧や血糖値、中性脂肪、善玉コレステロールなんかがちょっと異常、そんな「ちょっと、ちょっと」が色々重なっていると、実はとても危険ということが明らかになってるのよ。1つ1つの異常値はたいして大きくなくても、それがいくつも重なると、動脈硬化が進んで狭心症や心筋梗塞といった心臓の血管がつまるような大きな病気になるリスクを格段に高くしてしまうの。』
健人『ええっそうなんですか!?』
I先輩『そう。だからメタボ予防が重要視されているのよ。
健人『そうか、メタボって、ただお腹が大きいということじゃないんですね。しかも血管がつまる恐れがあるとは・・・太ってるからメタボだって笑ってる場合じゃないですね。
大事なのは体の中身の変化か...。なんだか不安になってきた...もう一度帰ってお父さんとお母さんの健診のデータを確認してみます!そのときはI先輩、相談に乗ってくれますか』
I先輩『私の保健指導は高いけど、かわいい後輩のためだから特別に教えてあげるわ』
健人は今日の残業をこれほど感謝したことはなかった。
つづく
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